正常圧水頭症
正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)は、脳の中にある「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という液体が過剰に溜まってしまうことで、脳を圧迫し、歩行障害や物忘れ、尿失禁などの症状を引き起こす病気です。特に高齢者の方に多く見られる疾患であり、一見すると「加齢による衰え」や「認知症」と見間違われやすいのが特徴です。しかし、この病気の最大の特徴は、手術によって症状の改善が期待できる「治せる認知症」と呼ばれている点にあります。豊中駅前にある当院では、この正常圧水頭症を早期に発見するために、MRI検査を行っています。梅田から急行で12分の豊中駅から徒歩3分という立地を活かし、近隣の豊中市にお住まいの方だけでなく、広域からも多くの患者さんにご相談いただいております。
正常圧水頭症の症状について
正常圧水頭症の症状は、主に「歩行障害」「認知機能の低下」「排尿障害」の3つが代表的です。これらは「三徴候(さんちょうこう)」と呼ばれ、日常生活に大きな支障をきたします。加齢のせいだと諦めてしまう前に、以下の症状に心当たりがないか確認してみることが大切です。
歩行障害の特徴
正常圧水頭症で最も早く、かつ顕著に現れるのが歩行の変化です。通常の歩行とは異なり、独特の歩き方になることが多いため、ご家族が気づくきっかけになることも少なくありません。具体的には以下のような変化が見られます。
- 足が地面に吸い付くような「すり足」で歩く。
- 歩幅が狭くなり、小刻みな歩行になる。
- 両足の間隔を広く取って、不安定さを補おうとする。
- 方向転換をする際に、何歩もかかってしまいスムーズに回れない。
このような歩行の不安定さは、転倒や骨折のリスクを高めるため、注意が必要です。足が上がりにくいと感じたら、早めの受診をお勧めします。
認知機能の低下(もの忘れ)
物忘れや意欲の低下が見られるようになります。アルツハイマー型認知症と似ていますが、正常圧水頭症の場合は「反応が遅くなる」「呼びかけへの反応が鈍い」「趣味に関心を示さなくなる」といった意欲の減退が目立つ傾向にあります。詳細な症状については「ものわすれ」のページも併せてご覧ください。
排尿障害
トイレが近くなる「頻尿」や、我慢できずに漏らしてしまう「尿失禁」が起こります。最初は夜間の頻尿から始まり、次第に日中も間に合わなくなることがあります。ご本人が自覚していても、恥ずかしさから相談をためらってしまうケースもありますが、脳の病気が原因である可能性があることを知っておいてください。
正常圧水頭症の原因について
私たちの脳と脊髄の周りには、脳脊髄液という無色透明な液体が常に循環しています。この液体は脳を衝撃から守ったり、老廃物を運んだりする役割を担っています。通常、この液体は作られる量と吸収される量のバランスが保たれていますが、何らかの理由でこの循環が滞り、脳室(のうしつ)という隙間に液体が溜まってしまうのが水頭症です。
正常圧水頭症の場合、頭蓋内の圧力(脳圧)が正常範囲内に保たれているにもかかわらず、脳室が拡大して周囲の脳組織を圧迫します。なぜ圧力が正常なのに症状が出るのかについては、完全には解明されていませんが、脳の深部にある神経線維が引き伸ばされたり、血流が悪化したりすることが原因と考えられています。
原因がはっきりしないものを「特発性(とくはつせい)」、他の病気に続いて起こるものを「二次性」と呼びます。加齢に伴う変化の一つとして捉えられることもありますが、脳内の環境を整える治療を行うことで、再び元気に歩けるようになる可能性を秘めた病気なのです。
正常圧水頭症の病気の種類について
正常圧水頭症は、その発症の背景によって大きく2つのタイプに分類されます。どちらのタイプであっても、適切な診断と治療が重要であることに変わりはありません。
特発性正常圧水頭症(iNPH)
明らかな原因となる病気がなく、加齢とともに自然に発症するタイプです。60代後半から70代以降の高齢者に多く見られます。「最近、おじいちゃんの歩き方がおかしい」「急に元気がなくなった」といった周囲の気づきが発見の鍵となります。当院では画像解析技術を用いて、脳室の拡大や脳の溝(脳溝)のバランスを詳細に確認しています。
二次性正常圧水頭症
過去に脳の病気を患ったことが原因で発症するタイプです。脳の病気によって脳脊髄液の吸収経路が目詰まりを起こすことで発症します。原因となる主な病気には以下のものがあります。
- くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)後の後遺症。
- 頭部外傷(重度の脳挫傷など)による影響。
- 髄膜炎(ずいまくえん)などの感染症。
くも膜下出血については「くも膜下出血」のページで詳しく解説しています。これらの既往歴がある方は、数ヶ月から数年経ってから症状が出ることもあるため、経過観察が欠かせません。
正常圧水頭症の治療法について
正常圧水頭症の治療の基本は、溜まりすぎた脳脊髄液を他の場所へ逃がしてあげる「シャント手術」です。この手術により、脳への圧迫が解消され、症状の改善が期待できます。治療へのステップは以下のように進められます。
タップテスト(診断のための検査)
手術を行う前に、実際に髄液を抜いてみて症状が改善するかどうかを確認する「タップテスト」を行います。腰のあたりから細い針を刺して脳脊髄液を少量採取し、その前後で歩行速度や認知機能がどう変化するかを評価します。これで効果が見られる場合は、シャント手術による改善の可能性が高いと判断されます。
シャント手術の種類
シャント手術にはいくつかの方法がありますが、近年の主流は以下の通りです。患者さんの状態に合わせて最適な方法が選択されます。院長はいずれの手術についても多くの経験があるため、手術についてのご質問にもわかりやすくお答えできます。
- LPシャント(腰椎-腹腔シャント)・・腰の脊髄の隙間からお腹の中(腹腔)へチューブを通す方法です。頭に傷がつかないため、比較的負担が少ないとされています。
- VPシャント(脳室-腹腔シャント)・・脳室からお腹の中へチューブを通す方法です。古くから行われている確実性の高い手法です。
- VAシャント(脳室-心房シャント)・・脳室から心臓の近くの静脈へチューブを通す方法です。お腹の手術歴がある場合などに選ばれることがあります。
手術に使用するチューブには「圧可変バルブ」という装置がついており、術後に外から磁石を使って、髄液を流す量を調整することが可能です。当院では手術が必要と判断した場合には、信頼できる提携病院をスムーズにご紹介し、術後のアフターケアは当院で責任を持って対応いたします。
正常圧水頭症についてのよくある質問
Q1. 認知症と言われましたが、水頭症の可能性はありますか?
A1. はい、十分に可能性があります。アルツハイマー型認知症と診断されていても、実は正常圧水頭症が合併していたり、水頭症が主原因であったりするケースがあります。MRI検査で脳室の形を確認することで判別が可能ですので、一度専門的な検査を受けることをお勧めします。MRIでは脳室の形以外にも、高位円蓋部と呼ばれる部分の狭小化などをみるため冠状断と呼ばれる平面での評価も行い詳しく脳の状態を確認します。
Q2. 高齢ですが手術は受けられますか?
A2. 正常圧水頭症の手術は比較的安全性が高く、80代や90代の方でも受けられることが多いです。全身状態を考慮する必要がありますが、手術によって自力歩行が可能になれば、介護負担の軽減や生活の質の向上に大きく寄与します。
Q3. 検査はすぐに受けられますか?
A3. 豊中駅前の当院では、即日MRI検査が可能な体制を整えています。お電話やWebでご予約いただければ、お待たせする時間を短縮して精密な検査を行うことができます。忙しいご家族の方にとっても、何度も通院する負担を減らせるメリットがあります。健診については「健診のご案内」もご覧ください。
院長より
正常圧水頭症は、脳神経外科医として非常にやりがいを感じる疾患の一つです。なぜなら、適切な治療によって、車椅子だった方がご自身の足で歩いて帰られるようになる姿を何度も見てきたからです。認知症のような症状が出ると「もう歳だから」と諦めてしまいがちですが、もしそれが治せる病気だとしたら、ご本人にとってもご家族にとってもこれほど明るいニュースはありません。
ばんば脳神経外科クリニックでは、日本脳神経外科学会専門医としての経験を活かし、丁寧な診断を心がけています。最新のMRI装置を導入しており、わずかな脳の変化も見逃さないよう努めています。また、私は日本脳卒中学会専門医・指導医でもありますので、くも膜下出血後の二次性水頭症の管理についても専門的な知見を持って対応可能です。
当院は大阪府豊中市の豊中駅から徒歩3分という便利な場所にあります。梅田からも急行で12分とアクセスが良く、提携駐車場も完備しております。土曜日は19時まで、日曜日の午前中も診療を行っているのは、平日に付き添いが難しいご家族の方にも来院していただきやすくするためです。「最近、歩き方が変わったかな?」「物忘れが増えたけれど、ただの加齢かな?」という些細な不安でも構いません。まずは一度、お気軽にご相談ください。早期発見が、健やかな明日への第一歩となります。
詳しくお知りになりたい方は、ぜひ「脳ドック」のページも参考にしてください。
